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ドイツとチェコの景観の印象


ヨーロッパの景色がなぜきれいなのか、改めて景観を見たくて、
ドイツは20年ぶり、チェコは初めての格安旅行をして来ました。
どこにカメラを向けても、看板や変な建物に遮られることなく写真
を撮れる幸せを満喫しました。

中世のままの「世界遺産」の街並み ◆中世のままの「世界遺産」の街並み
古い街並み、古い建物を自分たちの文化として
誇り高く保存し、利用。
古い街並みがある所には世界中から観光客が訪れ、
その経済効果は絶大!。
日本もこれは是非真似してほしい。
美しく整然と見えるドイツの風景は、貧しい自然故、また牧畜と小麦の文化故の
風景であったことに気づきました。ドイツの家がきれいに見えるからといって、
そのまま採用するのは大間違い。日本の気候風土にあった建物でなければならない。
日本の自然は力強く、草の勢いもすごい。家作り、森作りは、日本の自然、
風土にあった形で、考えていく必要がある。

この旅で、景観で重要なことは、連続した風景、統一感、全体の一体感であること、
また、景観は個人的に・部分的にできるものではなく、自然環境とあったものを
みんなで作り上げていくものであること。そして、環境と経済は必ず両立すると確信。

■連続した風景は美しい

広々と自然の地形のままに広がる田園に家並みの風景は美しく、落ち着きと安心感を
与えてくれます。これが日本の風景に一番欠けている部分ではないでし ょうか。
ガードレールのない道と田園 ◆ガードレールのない道と田園
田園風景のところどころに、赤い屋根に白壁の家
の村があり、田園は自然の地形のままに連続。
しかも、看板もガードレールもない。
本当に広々と見え、ゆったりとした気分になる。
しかし、この自然の地形の田園風景は、牧畜と
小麦生産のヨーロッパだから可能なんだ気づくが、
この広々とした眺めは羨ましい!
八ヶ岳で行われている別荘開発が、斜面や谷を活かした家作りになれば、南麓の自然の
雄大さが心底楽しめるのにと思う。八ヶ岳南麓から見るダイナミックな富士山、南アルプス
の山並みは世界最高の眺望なのに。・・・ここ大泉村では今合併に向け、新たな公共工事を
計画している。こんないい村がなくなってしまう。
夢が一杯ある村なのに、その財産に気づかない。残念で仕方ない。

■家の統一感で落ち着き

遠景で見る家並みが非常に美しく整然と見える:その最大の理由は屋根の色と壁の色が
統一されていること、それに、家の工法が同じであるからだ。
中世からの村 ◆中世からの村:
屋根の形、色が統一されていて美しい。          
・家の工法の統一: ブロックと材木 
  日本は、軸組、2x4,輸入住宅、プレハブ加工、ログなど雑多。
・屋根の色が統一: 黒かオレンジ系茶。(北部は黒)
・屋根の形が統一: 切り妻のシンプルな大屋根。
  総二階は商業地域だけで、軒が連なっているため、見えるのは正面のみ。
・外壁の工法と色が統一 : 白の塗り壁。 あるいは塗り壁と板壁のみ。
  日本の壁は板壁、白壁、トタン、タイル、サイディング、レンガ風と雑多。
  また色も雑多。

■自然に合う郊外の住宅

市街を離れた途端、樹木が多くなる。白の塗り壁は木々に隠れ、田園のなかに
切り妻の屋根だけがみえる。日本のような総二階の家はない。平屋に見えても、
実は地下室があり、2階建てから3階建てと大きい。
ペンション ◆ミッテンヴァルドのペンション
八ヶ岳と同じようなリゾート地、オーストリアとの
国境に近いミッテンヴァルド(Mittenwald)を訪れた。
殆どの家がペンション。壁は白の塗りかべに板壁、
屋根は黒、と外観の色が統一されているので、
周りの山の風景に良く似合う。
八ヶ岳の建物にこんな統一感をあれば、観光客が押し寄せるだろうに。
でも、決してそのままを輸入しないでほしい。日本の気候はドイツと違うのだから。
雨が多い日本の気候では、写真とは反対に、建物の壁の下部分は板壁の方が
合っていそうだ。。

景観は個人ではできない。山に住む私達は、周りの家、周りの自然との一体感を
もっと考えなくてはならない。 

■きれいに見える森や花は、弱い自然のせい?
野草のじゅうたん ◆野草のじゅうたん
高原のリゾート、ミッテンヴァルトには、
自然の中を歩くコースが充実していた。
森は環境保護地域で可憐な花が咲き、
きれいな森だった。
しかし、森には、チョウチョも蚊も虫もいなかった。
つまり、野草が可憐なのも、一見、きれいに見える森も、自然が弱いからのようだ。
鳥の鳴き声は多いが、種類は少ない。ドイツを旅行中に見た樹木の花も白色だけだった。
樹木の種類が少ないのだろう。

日本の力強い自然と比べると、森が整備されて美しいと勘違いしてしまう。
欧州の森も、かつては広葉樹の森だった。小麦と牧畜生産のため、欧州人は殆どの森林を
破壊し、残った森林は効率性を求めて針葉樹にして、過剰使用して来た。
今その反省から、可能な所は広葉樹の森に戻そうとしているが、自然が弱いので、
元に戻すのは大変なようだ。

■ドイツになかったもの

・休耕田がない。 牧草地の手入れは義務。放棄された畑は全く皆無!
・広告看板がない。 のぼり旗もない。  道路、鉄道の沿線に看板は皆無。
・ガードレールがないので景色が寸断されない。 必要な所には両側に樹木。
・ゴミがない(大都会に少し)。 河川にゴミ・空き缶皆無。
・自動販売機なし。駅構内にキップの自動販売機少し(性能悪い)
・郊外店(大型店)なし。  派手な看板の店がない。
・雛壇方式の住宅地がない。
・金属製の扉がない。 家の扉はすべて無垢の木製。
・コンクリートを使わない。 道路の縁石、護岸工事すべてが石。

■この20年間で変わったこと。

・合板の建具が登場。
・高層ビル・・ボンに1棟の高層ビルが建設され、景観をぶちこわすと批判の対象に  なっている。
・ベルリンは有名建築家の建築ラッシュ。建築志望の方、ベルリンへどうぞ。

■山の公園の定義

1.National Park---手付かずの自然で残す地域。
 現代まで、偶然に人間の手がほとんど入らず残っている地域を、これ以上開発せず、
 自然の営みに任せる。自然の循環の課程から、自然と共存しながら生きていく方法を学ぶ。

2.Nature Park---自然との共存を考えながら、人間が管理し、手を加えながら自然の営みを
 残す。そして、出来る限り、本来の広葉樹の森林に順次もどしていく。
 この考えの延長線上に、田園があるようだ。

(2003年 6月 A.K)