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ミルフォードトラック in New Zealand を歩いて


久々の海外旅行。
思いっきり歩きたくて、真冬の八ヶ岳から、初秋のニュージーランドへ飛ぶ。
羊と観光の国、ニュージーランドには歩くコースが至る所にあった。
私が歩いたミルフォードトラック(Milford Track)は、世界一美しい歩くコース
と言われ、ニュージーランドの南島のフィヨルドランド国立公園(世界遺産)内にある。
自然を守るため、一日の入場者数は60人に制限され、しかも年6ヶ月間だけのオープン。
世界中からハイカーが集まってくるあこがれの歩く道だという。
ミルフォードトラック 雲海
ミルフォードトラックは、全く外部から遮断された手付かずの大自然の中に作られた歩くための道。
レインフォレストの苔むす樹林、滝、川、そして突き抜けるような青空に山。
美しい景観、そして、贅沢にも、自然を一人占めしている気分。最高でした。

歩く道は、人が通れるだけの土の道、石ころだらけの55kmの道。
そこをただ黙々と3日間で歩くのです。
一日15から20km、標高差800mの山越えとかなりハード。
だから、終わった時の達成感と、参加者との一体感は格別でした。
滑らないように、金網が張ってある ←滑らないように、金網が張ってある道

年間7000mmの雨が降る地域なので、
道が雨で流されるのは日常茶飯事。
それを、常に修復してコースを確保。
また、いざというときの避難用の道も
完備しているのに驚いた。
もっと驚いたのは、宿の質素なこと、6人部屋の2段ベッド。
環境負荷をできるだけ小さく、という姿勢が徹底している。
ある海岸の歩くコース Mt.Cook
そして、もっと、もっと驚いたのは、4日間歩いても、ゴミのかけら一つ、
包装紙のかけら一つ落ちてないこと。海岸を歩いても同じ。ゴミ一つない砂浜。
まして吸い殻、空き缶なんか全く存在しない。
なんと気分のいい景観か。

この環境に対する意識の高さに本当に感謝!!

自然に対するマナーの良さはニュージーランド人だけではない。
そんな中、ニュージーランドの最高峰マウントクックで見かけた日本人は、
歩きながら花を摘み取っていた。これは固く禁止されている。
その人を見て、日本の若者が、凄く恥ずかしいと言ったのに、
私は少し救われた思いがした。

私は八ヶ岳高原の景観は世界一だと思っている。
でも、現実は、川にも道にもゴミが散乱し、ゴミを見ないで何分歩けるだろうか。
自然も景観も、意識をもたなければ簡単に壊すことができる。
「ゴミのない美しい八ヶ岳の景観」を早く、見たい!。
歩く道のサイン ←歩く道のサイン
一歩一歩土を足の裏に感じながら、また一歩一歩景色を見るという満足感。
「歩く」って、本当に人間らしくて、感性を豊かにしてくれる。すばらしい!
そして、本当に「ミルフォードトラック」ありがとう。

【余談】
●ニュージーランドは日本の約70%の大きさ。人口はたったの380万。
 しかも、150万人が商業都市オークランドに集中。
 街をはずれた途端、牧場が見渡す限り続く。羊はいても、人影はない。
 移動手段は、車かバス。普通の道を時速100Kmで走る。列車はないに等しい。
●丸裸の山々
 ニュージーランドに白人が移住して150年。
 そして開墾した結果、今では、見渡す限りの山々が丸裸になった。
 人間の力は凄いと変に感心してしまった。
 その反省から環境への意識も高く、今、環境省では、
 白人が入植する前の生態系への見直しをしている。

(2001年 3月 A.K)