リーフレット
八ヶ岳に住みたい〜美しい景観を作りながら
八ヶ岳に住む喜びは、
美しい自然の風景を眺めながら、
四季の彩りを肌で感じ、
大きな空間に身を置く開放感にあります。
しかし、その美しい風景が、私たち人間によって壊されてきました。
特に、家の建設による自然破壊、景観破壊が目立ちます。
八ヶ岳に暮らして、私たちも自然の一部であること、
そして、自然がもたらす心の豊かさに感謝すると同時に、
自然景観の重要性に気づきました。
この地に住まいを持つ時、
もっと自然のこと、
自然と共に暮らすこと、
そして、地域のことを知れば、
自然景観を壊すことも少なく、みんなが快適に
過ごせるのではないでしょうか。
八ヶ岳に暮らして、
「こんなこと知っておけばよかった」
と思うことがたくさんあります。
これは、そこから生まれた住まい作りへのメッセージです。

家を建てる前に
・土地の広さは最重要課題
少なくとも150坪、できれば200坪以上ほしい。
100坪では、自然を残すのは難しい。
200坪だと、日当たりを確保しながら、樹木も残せる。
自然の木のある家は美しい。
隣とも適度の距離を保てるので、人の気配も気にならず心地よい。
土地を選ぶ時、後で後悔しないよう、できれば広さを求めたい。
森に家を建てる時、木を切らなければならない。
しかし、自生の木ほど、自然を身近に感じさせるものはない。
冬の風を和らげ、夏は緑陰を作り、隣との目隠しになる。
木は残そう。切ったら植えよう。植えると自然の維持に近づける。
自然の地形は美しい。
地形を活かして家を建てると、広々と見え、自然との一体感も大きい。
窪地は梅雨時水路になるので、埋めないでおきたい。
造成は地形だけでなく、”みず道”も変えるため、問題が起きやすい。
安易な造成はやめよう。
家を作る
・お隣へ配慮を・・境界まで余裕を持とう
境界から最低3−4m以上引いて家を建てよう。
目隠し用に木を残せるし、植えることもできる。
隣地の日照を侵害しなくてすむ。
特に屋根の雪は遠くに落ちるので、充分な距離が必要になる。
「法的には問題ない」 と言われても、隣の家が接近していて心地よい人はいない。
お隣への配慮は、心地よく暮らす第一歩。それが田舎では特に大事だ。
田舎では家全体が見え、家は眺めの一部となる。
統一感のある家並は見る人に安らぎとゆとりを与えてくれる。
隣の家が離れていても、遠景では連続した家となって目に入る。
屋根の向き・色、外壁の色を揃えれば、美しい眺めとなる。
田園・森と調和した家は美しい。
屋根は自然に溶け込む黒か濃い茶を。
シンプルな屋根は雄大な景色に良く似合う。
外壁は木や土の自然素材がいい。
色は茶系を基調にすると、樹木の緑が美しく映える。
派手な色は自然の中では不協和音を発し、住み手が飽きるのも早い傾向がある。
民家は地域の気候にあった家のお手本。
屋根の向き、庇、屋敷林に注目。
設計者任せにしないで、住んでいる人に雪や風、水のことを聞いてみよう。
庭を作る
・自然の庭は飽きない
庭は一番身近な自然。
野の花も自生の木もよく育つ。手間もいらない。
それに、小鳥やリスもよく訪れる。
庭に、自然のままの部分を確保すると、八ヶ岳の自然の維持につながる。
(だから無断採取は厳禁!)
急いで土を入れ、園芸種の樹木や芝生で庭を造らない方がいい。
”芝生”や”外来種”は八ヶ岳の生態とは違う。
よその土も生態系を変える。
土が自然のままなら、2−3年待つと野草が出てくる。
木の生長を見ながら、ゆっくり庭づくりをするのは楽しい。
庭に砂利を入れると、後でやっかいだ。
暮らす
・毎日自然を感じる醍醐味、暗闇と輝く星空
静けさの中に小鳥の足音が聞こえる。
木の葉がざわめき、夜は満点の星! 自然の中に暮らす心地よさは格別。
だから、気をつけよう。音は意外に遠くまで聞こえる。
暗闇があるからこそ、輝く星空と、月夜の明るさがある。
自分ちの門灯でも星がかすむ。外灯、門灯は必要な時だけに。
自然が豊かな所には、不便も自然の厳しさもある。
冬は寒くて長い。雪も降る。
でもそれが「自然」。その厳しさを受け止める余裕をもとう。
雨、風、草の勢いだってスゴイ。
厳しいからこそ、自然の美しさが惜しみなくあり、
八ヶ岳の自然を肌で感じながら暮らす喜びがある。
失敗!知っておけばよかった
・100坪じゃ狭かった。
・隣や道路から引いて家を建てればよかった。
→雪が隣の敷地に落ちてトラブルに。
日陰になって道が凍る
→屋根の形、向き、庇に注意。
・標高でこんなに気温が違うなんて。
→100mで1度下がるのが実体感。
・よその土を庭にいれた。
→野草が育たない。
→木は、風も暑さも人の目も遮る。自然の風情も創る。
→ 突然道路ができて、騒々しくなった。
・電線を地下に埋めればよかった。
・”塀”は眺めをさえぎるだけだった。

(イラスト製作:T.Usui)